2026年11月5日号

原料高は「新しい水準」へ。輸出は単価主導で伸び、価格転嫁は国内外に広がっています。本号は創刊にあたり、初回レポート(直近1〜2週間の主要ニュース+農水省10月定例資料)と、本日確認した追加分をあわせてお届けします。

2026年11月5日(木)付け 掲載:11件(初回レポート6件+日次追加分5件) 運営:株式会社Brilligent/MATCHA X

本日の要点

  1. 原料高は「一時的」から「新しい水準」へ。2026年産一番茶は鹿児島で約2倍・静岡で約7割高。一保堂も「現在の水準がある程度続く」と公式に見通しを示した
  2. 輸出は額が量を大きく上回る伸び。2026年1〜8月の緑茶輸出は674億円・7,983トンで、通年過去最高だった2025年(721億円)に8か月で迫る。牽引は抹茶を含む粉末状
  3. 価格転嫁が本番入り。nana's green teaが本日から抹茶商品を一斉値上げし、Starbucksはホリデーの看板に抹茶を据えた。中国産抹茶の輸出増も続く
第 一 部

初回レポート(完全版)

対象:直近1〜2週間の主要ニュースと、農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」。

原料価格

一番茶の高騰が確定。碾茶は煎茶の約4.9倍、生産量が増えても価格は下がらない

要点:農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」によると、2026年産一番茶は前年比で鹿児島県で約2倍、静岡県で約7割高い価格で取引された。2025年産の碾茶(全茶期)の荒茶価格は8,562円/kgで、煎茶1,746円/kgの約4.9倍。一番茶の碾茶は10,030円/kgに達した。一方で碾茶の生産量自体は2025年に6,278トンと2014年の約3.2倍まで増えている。それでも価格が下がらない構造が数字で示された。

MATCHA Xへの影響:調達コストは「下がるのを待つ」局面ではない。量の確保が効く鹿児島を軸に、宇治・西尾・静岡・八女を品質とストーリーで使い分ける5産地の持ち方は、そのまま価格変動の分散になる。価格交渉は年単位・数量コミット型でないと優先配分を得にくい。

打ち手:見積りの前提価格には「年1回の改定条項」を取引先と先に合意しておく。高騰局面ではスポット買いより、産地・茶期を分散した年間契約で物量を押さえる方が、単価の安さより供給の確実性で効く。

出典:農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」 農林水産省の資料(PDF)

輸出入

輸出は2026年1〜8月で674億円。「量より単価」の伸びに転じた

要点:同じく農水省10月資料(原資料:財務省貿易統計)。2026年1〜8月の緑茶輸出額は674億円、輸出量は7,983トン。2025年通年が過去最高の721億円・12,612トンだったので、金額ベースでは前年1年分に8か月で迫るペース。2025年の内訳では、抹茶を含む「粉末状の緑茶」が輸出額の84%・量の69%を占め、輸出単価は6,927円/kgと「その他」の3,007円/kgの約2.3倍。統計上、抹茶単独の数字はなく「粉末状(抹茶+粉末茶)」である点は押さえておく必要がある。有機については、同等性の仕組みを使った有機茶が米国向け輸出量の62.8%、EU・英国向けの63.6%を占める(2025年)。

MATCHA Xへの影響:輸出機会は単価主導で拡大している。同じ量でも、どの市場・どのグレードで売るかで売上は大きく変わる。EU・英国向けは有機比率が6割超で、有機JAS/同等性対応のロットがないと棚に載りにくい。

打ち手:輸出を狙うロットは最初から「有機対応可否」と「残留農薬基準(輸出先別)」を仕様に含めて産地と交渉する。農水省も輸出先の残留農薬基準対応を支援中(同資料)で、使える公的支援がある。

出典:農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」(原資料:財務省貿易統計) 農林水産省の資料(PDF)

小売・価格

一保堂茶舗が価格改定を実施し、「高止まりが続く」と明言

要点:一保堂茶舗は2026年9月1日付の公式発表で、10月・11月に商品仕様の見直しと価格改定を実施するとし、理由を「2026年産は抹茶の生産量が大幅に伸びたが需要は引き続き旺盛で、取引価格は前年を上回ったため」と説明した。あわせて「以前のような価格水準に完全に戻るか見通すことは難しく、現在のような水準がある程度続くと予想」と、老舗自身が高止まりの継続を公式見解として出した点が重い。同社発表では、京都市場の一番茶・碾茶の取引平均単価は2026年に17,797円/kg(6月19日時点)で、前年の14,144円/kgからさらに上昇している。抹茶への生産転換が進み、玉露・煎茶・番茶類の生産量は大きく落ち込み価格も高騰した、ともしている。

MATCHA Xへの影響:小売の基準価格が上がると、卸の値上げ交渉の追い風になる(「老舗もこの水準」が説明材料になる)。逆に、茶全体の高騰はカフェ側のメニュー全体の原価圧迫になるため、抹茶単体ではなく「1杯当たり原価」で語れる資料が営業で効く。

打ち手:卸価格の提示では、原料指標(一番茶碾茶の市場平均など一次数字)を添えた価格改定レターの型を今のうちに用意しておく。

出典:一保堂茶舗「2026年10月・11月 商品仕様の見直しと価格改定について」(2026-09-01) 一保堂茶舗の発表

規制・認証

「日本茶」GIの推進体制が本格始動。模倣品対策が業界の表テーマに

要点:「日本茶」は2026年7月10日に地理的表示(GI)登録された(第179号、全国を生産地とする初の農産品)。10月21日に日本茶GI推進委員会が都内で発表会を開き、活動指針を公表した。農水省資料は、中国産の「宇治抹茶」が流通するなど知的財産の侵害事例が増加傾向にあることをGI登録の背景として明記している。GI利用申請は10月16日時点で72件、対象商品は発売予定を含め約500品(発表会報道)。

MATCHA Xへの影響:海外で「日本産であること」自体を証明する公的な道具ができた。輸出向けロットでGIマークを使えるかどうかは、模倣品との差別化と価格維持に直結する。一方、GIは「日本茶」全体の保護で、個別ブランドの商標とは別物として分けて考える必要がある。

打ち手:輸出を視野に入れる商品から、GI利用申請の要件(国内栽培・国内加工の緑茶全般が対象)を満たすか早めに確認しておく。

出典:農林水産省「茶をめぐる情勢(令和8年10月)」(GI登録の一次情報) 農林水産省の資料(PDF)/発表会の開催と申請件数は2026-10-22付報道

小売・外食

nana's green tea、本日11月5日から抹茶商品を一斉値上げ

要点:株式会社七葉は10月14日発表・11月5日実施で、全国店舗と公式オンラインストアの抹茶使用商品を改定した。抹茶ラテ(M)は620円から710円へ、ドリンク単品は+70〜90円、物販の抹茶ラテ缶は2,400円から2,900円へ。理由は「世界的な抹茶需要の高まりにより主原料の抹茶価格が大幅に上昇」。抹茶ラテ缶は原料確保が非常に困難として一部店舗限定販売だったが、10月15日の追記で11月5日より全店販売再開予定とされた。

MATCHA Xへの影響:大手カフェチェーンが「抹茶は値上げしてよい原料」として市場に示した事例で、卸先カフェへの価格改定提案の際の外部証拠になる。値上げしても全店で物販を再開する点からは、需要は落ちていないという読みもできる。

打ち手:既存・見込みのカフェ取引先には、この事例を添えて「メニュー価格改定とセットでの卸価格見直し」を提案するのが通しやすい。

出典:株式会社七葉プレスリリース(2026-10-14、PR TIMES) PR TIMES のリリース

海外

Starbucksがホリデー新作に抹茶。中国産の輸出増も続く

要点:(a)Starbucks米国は11月4日公式発表・11月5日開始のホリデーメニューで新作「Iced Sugar Cookie Cream Matcha」を投入した。抹茶がコーヒーチェーン最大手の季節看板に入る動きは継続している。アジア太平洋地域でも Pure Matcha 系の新シリーズが始まっている(10月27日〜)。(b)中国・衢州では2026年1〜9月の抹茶輸出額が0.68億元で前年比+40.65%、地場大手の茗皇公司は同+283.79%と報じられた(衢州海関の発表を新浪財経が10月29日に報道)。日本産が品薄・高騰する間に、中国産が量と価格で海外の加工用・業務用需要を取りに来ている。

MATCHA Xへの影響:需要側の追い風(大手チェーンの定番化)と、供給側の競合(中国産の増産・輸出増)が同時に進んでいる。価格勝負の加工用グレードは中国産と正面衝突しやすい。日本産・産地明示・GIといった「証明できる日本産」で戦う領域に軸足を置く方が、単価と粗利を守れる。

打ち手:競合比較では「中国産との価格差」ではなく「産地・茶期・認証の開示度」で比較する。安さを求める先には無理に合わせず、量の確実性とトレーサビリティで選ばれる設計に寄せる。

出典:Starbucks公式(2026-11-04) Starbucks の発表/新浪財経(2026-10-29、衢州海関発表の報道)

第 二 部

日次追加分

初回レポート以降、本日までに確認した追加分です。財務省貿易統計の9月分など、新規の公式統計発表は本日時点で確認できませんでした。

海外

Starbucks、ホリデー抹茶を中南米・豪州にも展開

要点:中南米・カリブでは11月3日から「Iced Matcha Latte with Panettone Cold Foam」を季節限定で投入(対象はペルー、ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、エクアドル等)。豪州でも「Matcha Latte with Holiday Cold Foam」と「Melted Mochi Mallow Matcha Latte」をホリデーメニューに採用した。英国でも11月5日から「Iced Peppermint White Chocolate Matcha」(£5.75〜)が始まると報じられている(英国分は現地メディア報道ベース)。

MATCHA Xへの影響:米国の新作に加え、抹茶が「複数地域×ホリデー定番枠」に入ったことが確認できた。需要の中心は茶会用ではなくラテ・デザート用の業務用グレードで、量と安定供給が問われる領域。海外カフェ・チェーン系の季節需要が、まとまった量の受け皿になる。

打ち手:輸出向けは「ラテ用グレードの安定供給量と価格改定条件」を先に仕様化しておくと、季節メニューの採用交渉で有利。

出典:Starbucks Latin America公式発表(2026-11-03) Starbucks の発表/Starbucks Australia公式 Starbucks Australia の案内

原料価格・競合

三六園、秋茶被覆の業務用抹茶「Grade C」を6,000円/kgで11月発売予定(熊本)

要点:三六園が、熊本産の秋茶に収穫前7日以上の被覆をかけて色と旨味を高めた業務用抹茶を開発した。2026年10月収穫、11月頃発売予定で、卸参考価格は6,000円/kg(1kg袋、最小1袋)。同社は「価格・時期・数量は作柄と品質評価で変わり得る計画値」と明記している。

MATCHA Xへの影響:食品・ラテ用グレードの国内卸の目安価格として6,000円/kgが公表された形。この水準との比較で価格の説明を求められる可能性が高い。一方で「秋茶×短期被覆」という低コスト化の手法自体は、調達先の幅を広げる原価対策の参考になる。

打ち手:食品用グレードについて、産地・収穫期・被覆日数を明示した仕様書を用意し、価格差の根拠を説明できる状態にしておく。

出典:三六園公式 製品ページ 三六園の製品ページ

小売・外食

11月の食品値上げ1,469品目。緑茶飲料にも「抹茶ブームによる茶葉高騰」の波及

要点:帝国データバンクの集計として、2026年11月の飲食料品値上げは1,469品目(前年同月の約10倍)。小売現場への取材では、緑茶飲料が店頭で10円程度値上がりし、理由として「抹茶ブームによる原料茶葉の高騰」が挙げられた(日テレNEWS、2026-10-29)。なお、値上げ理由の部分は小売事業者への取材ベースの報道で、各飲料メーカーの公式理由とは分けて読む必要がある。

MATCHA Xへの影響:抹茶原料高がペットボトル緑茶の価格にまで波及していることは、茶原料全体の取り合いが続くことの表れ。取引先にとっても「茶は値上げが当たり前」の空気ができており、価格改定や改定条項付きの契約を通しやすい局面でもある。

打ち手:新規の卸見積もりには、原料市況に連動する価格見直し条項を標準で入れる好機。

出典:日テレNEWS NNN(2026-10-29、帝国データバンク集計を引用) 日テレNEWS の記事

小売・外食

会津・茶室麟閣、呈茶料金を600円から700円へ(12月1日〜)

要点:会津若松観光ビューローが11月1日、鶴ヶ城内の茶室麟閣の呈茶料金を2026年12月1日から600円から700円(+16.7%)に改定すると発表した。理由は「原材料価格の高騰」。

MATCHA Xへの影響:小規模な事例だが、観光地の呈茶(茶会・体験用途)でも価格転嫁が公式に進んでいる証左。高価格帯の用途は値上げ耐性が相対的に高いとみられ、上位グレードは価格よりも供給安定と産地の物語が差別化軸になる。

出典:一般財団法人 会津若松観光ビューロー公式(2026-11-01) 会津若松観光ビューローの発表

国内需要

京都府産抹茶100%スイーツ「MAMIDORI」、ふるさと納税の返礼品に新規採用

要点:オンライン抹茶スイーツブランドMAMIDORI(京都府産抹茶100%)の「大福+マドレーヌ」セットが、京都府のふるさと納税返礼品に新規採用されたと11月4日に発表された。同ブランドは阪急うめだ本店のイベントで10日間に1万個超を販売した実績を公表している。

MATCHA Xへの影響:国内のプレミアム抹茶スイーツ需要と、ふるさと納税という販売チャネルの厚みを示す事例。宇治・京都府産の高品質原料は小売・ギフト用途でも引き合いが強く、産地ブランドを持つロットの配分(輸出向けと国内ギフト向けのバランス)が収益を左右する。

出典:PR TIMES(2026-11-04) PR TIMES のリリース(Infoseek掲載版)

今後の注目点